遺言で出来ること1「相続分の指定または指定の委託」

相続分とは、各相続人が相続する遺産の割合のことで、遺言がない場合には、法律で定められた割合(法定相続分)となります。例えば、相続人が妻と子2名の場合、妻が2分の1、子が各4分の1などと決められています。

 

しかし、遺言者の中には、様々な事情から、この割合を変更したいと考える方もいるでしょう。例えば、子の1名には、これまで多くの経済的支援をしてきたので、もう1名の子の割合を多くしたい、などです。

 

このような場合、遺言で、法定相続分とは異なった割合の相続分を指定することができ、遺言で指定された相続分(指定相続分)は、法定相続分より優先することになります。そして、相続人は、遺言による相続分の指定があった場合は、指定相続分の割合を基準にして、遺産分割をすることとなります。

 

ところで、遺産に、借金やローンなどの債務があった場合はどうなるのでしょうか。相続人は、不動産や預貯金などのプラスの財産のみならず、債務も相続することになるのですが、遺言がない場合は、債務についても、やはり、法定相続分の割合で相続することとされています。では、遺言で相続分の指定がされた場合は、債務は、法定相続分ではなく、指定相続分の割合で相続することになるのでしょうか?

 

結論としては、遺言で相続分の指定があった場合は、指定相続分の割合で債務を相続することになります。ただし、その債務の債権者(金融機関など)は、たとえ相続分の指定があったとしても、法定相続分にしたがって各相続人に請求することができることになっています。

 

つまり、相続人どうしの関係では、指定相続分に応じて債務を分担することになるのですが、これを債権者には対抗できず、法定相続分で請求されたら、各相続人は一応その額を支払う必要があり、指定相続分の割合を超えた支払分については、負担すべき他の相続人に請求して調整するということになります。

 

なぜなら、債権者から見れば、自分たちの関与なく、法定相続分とは異なる負担割合にいつの間にか変えられてしまっているわけで、例えば、返済能力のない相続人に相続分を集中されてしまうと、回収不能となり、大きな損害を被ってしまうからです。

 

遺言で相続分の指定をするときに、比較的債務の額が多い場合には、このような債務の負担の問題があることを考慮したうえで遺言を作成すれば(例えば、債権者からの法定相続分に応じた請求に、各相続人それぞれが、とりあえずは、それぞれの取得した遺産から支払いができる程度には相続分の指定をしておく、など。)、よりトラブルになりにくい遺言になると言えます。

 

なお、遺言で、この相続分の指定を、第三者に委託することもできます。ただし、相続人や包括受遺者(相続人以外の者で、遺言で、遺産の一定割合の遺贈を受ける者)は、その相続について利害関係があるため、これらの者には委託できないと考えられています。

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